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約束の午後1時ジャストに携帯が鳴り、
5分後に王子様は、白馬にも乗らずに、松尾橋をとことこ歩いて、
「お待たせいたしました」と東詰めの信号の前に姿をお見せになりました。
「その大きな、お荷物の中身は、塩ビ版なの?」と恐る恐る訊けば、
「いいえ、 BFKの版画紙が入っているだけです」。
ほっとして、刷り色見本は?と訊けば、「はい、ここに」と出して来られたのが、
幅 0,5ミリ×1,5センチの小さな小さな、色見本。
そして、くるんくるんになった、絵絹。
これ、何なん?と訊けば、「これに、刷ってもらおうかと」。
のけぞる吉田。
菊だけの筈が、芍薬に、アネモネと、「なぁ、何で、どんどん、増えるん?」。
結局、私は、9枚刷る羽目に。
結局、私は、9枚刷る羽目に。
赤のインクは、版に残り、大きな刷りは、難しい上に、
BFKの紙は、入れ忘れておいででした。