2020年12月31日

鋼の朽ちていくとき

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  鋼の朽ちていくとき   岬 多可子


  荒れた納屋から 暗い鋼の刃。
  百合の花粉のような烈しい銹が
  厚く被い 罅割れて
  しぜんと零れてくる。
  その刃物が ほかの什器といっしょに
  枯草の上に並べられていくのを 見たとき、
  斃れたひとのこと その手足の
  銹 罅 のことを思ったのでした。
  掌は天を受け 蹠は地を受け、
  熱く汚れた脂の泥を拭ったでしょう
  火の蛇の通った途も辿ったでしょう。
  世界というもの 時間というものに
  触れ続け 接し続け、
  内側から厚みと硬さを育てて。
  背負われたり 抱かれたり 寝かされたりして、
  まだ なにひとつ なににも触れぬ
  柔く白い さいしょの頃にも きっと、
  ふいに 光のような力は 閃き。
  身から出る とは言うのでしたが、
  でも 銹も罅も朽ちる うつくしさでした。

                        掌詩集 木 金 土 より全行
posted by cocoacat at 01:38| 日記 | 更新情報をチェックする