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小花の金銀に散り敷いて 岬 多可子
九月から十月へ 途切れず、
濡れた閾を横切っていくのは
ひとではないものばかり。
そこに眠っているものたちは
とうに ひとの肉を 脱ぎ了えて、
のこされたわたしたちは もう
想うだけ、
流れてくるのを 眼や耳に受けて
ほかに できることがない。
ほろほろと こぼれる前 こぼれた後も
ひとつひとつが ちいさくちいさく
金銀に薫り立ち
ひえびえと明るく、
そして 端から 透きとおって傷みやすい
酷な 匂いだ。
また 椿の 三片に割れた実も 拾う。
これらは ひたすらにかたくなで、
夕方には すみやかに
暮れていく 冷えていく。
濡れた閾を横切っていくのは
ひとではないものばかり。
そこに眠っているものたちは
とうに ひとの肉を 脱ぎ了えて、
のこされたわたしたちは もう
想うだけ、
流れてくるのを 眼や耳に受けて
ほかに できることがない。
ほろほろと こぼれる前 こぼれた後も
ひとつひとつが ちいさくちいさく
金銀に薫り立ち
ひえびえと明るく、
そして 端から 透きとおって傷みやすい
酷な 匂いだ。
また 椿の 三片に割れた実も 拾う。
これらは ひたすらにかたくなで、
夕方には すみやかに
暮れていく 冷えていく。
掌詩集 木 金 土 より全行