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木々の息のあいだに 岬 多可子
五月、いっそうゆっくりと
深まっていく 木々の息。
水や火や風が たえず かたちを変え
揺れ 移ろう。そのように
木々もまた
いっときも おなじかたちでは立たない。
葉群れのささめき 小枝の尖端がさし示す 生、
そのゆくすえ かすかに明滅するのは 死。
歓びと歎きとが混じった
はつなつの においだ。
夕暮の青は しだいに重く おりてきて
木と木のあいだを満たす。
木の向こうにある夜 夜の向こうにある木、
かくまわれ 鳥や虫の声は くぐもり、
目立たぬ花も しきりと散る。
つぎつぎと 落ちていくところ
ほのかに あかるくやわらかく、
白く 足元を覆っていくもの。それを
名づけて呼ぶことは しない。
深まっていく 木々の息。
水や火や風が たえず かたちを変え
揺れ 移ろう。そのように
木々もまた
いっときも おなじかたちでは立たない。
葉群れのささめき 小枝の尖端がさし示す 生、
そのゆくすえ かすかに明滅するのは 死。
歓びと歎きとが混じった
はつなつの においだ。
夕暮の青は しだいに重く おりてきて
木と木のあいだを満たす。
木の向こうにある夜 夜の向こうにある木、
かくまわれ 鳥や虫の声は くぐもり、
目立たぬ花も しきりと散る。
つぎつぎと 落ちていくところ
ほのかに あかるくやわらかく、
白く 足元を覆っていくもの。それを
名づけて呼ぶことは しない。
掌詩集「木 金 土」より全行