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春の宵金糸銀糸の雨の中呪文を解かれマグノリア咲く
傲慢を隠していとも軽やかに春日のごとき友の足取り
白梅の仄かな香りに導かれ迷う路地裏野良猫気分
月白に心鎖した少年よ恐がらずに歩いてごらん さあ
くれないの色も形もそのままにはつはつ傾き侘助の散る
一心にインク練る人その肩に犬の毛二本光らせながら
桜風もの言いた気な眼差しの老猫一匹香箱を組む
われの住む夜の国には猫二匹その他の声ついぞ響かず
日だまりに腕差し伸べて影作る今立つわれを確かめる為
挽きたてのコーヒー豆の香を乗せてバスは冬日を軽々進む
今日もまたうつつに迷うその路に微かに香る白の木蓮
月の夜の猫は僅かに身構えて見えない獲物ひたすらに待つ
五月闇寝返る度に届く声真直ぐに生きよ朗らに生きよ
長雨の百(もも)の葉互いに抗わず色を極めて夜へと傾く